2022年 12月 09日
VANITY FAIR FEBRUARY 1936 / Cover Art by Covarrubias |
メキシコ人のコスモポリタンな画家コバルビアス (Migel Covarrubias) のポートレイト 。撮影者のニコラス・マーレー (Nickolas Muray) はニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジのポートレイト・スタジオを拠点に雑誌『HARPER'S BAZAAR』『VANITY FAIR』『VOGUE』などでも仕事し、メキシコ人女性画家フリーダ・カーロとも恋仲だったこともあったハンガリー生まれのアメリカ人写真家で、コバルビアスとは大親友であり、共に20年代~30年代のメキシコ人、アメリカ人アーティストたちのボヘミアン・サークルの中心的存在だった。
コバルビアスもニコラス・マーレーのように『VANITY FAIR』や『VOGUE』ではカバー画や挿絵を手掛けているが、その才能は幅広く、画業だけでなく著述家としても才能を発揮した。その最たる著作のひとつがインドネシアのバリ島の歴史、生活、芸術、民俗の細部についてまとめ1937年に刊行された『ISLAND OF BALI』である。きっかけは1922年に刊行されたドイツ人グレゴール・クラウゼ (Gregor Krause) による写真集『BALI』に魅せられ、バリ島を見てみたいという強い望みを抱いたことによる。そして1930年春に妻とバリに旅立ち、そこで幸運なことにバリ人の生活のあらゆる面に通じ、バリに来る考古学者・人類学者・音楽家・画家たちにとっての情報源となっていた当時のバリで最も有名な白人ワルター・スピース (Walter Spies) と親友となり、島じゅうを歩き回って、バリを見聞した。コバルビアス夫妻のバリ滞在の結実である『ISLAND OF BALI』は学術書として出版されたものではなく、バリに興味を持つ一般の読者のための本だが、バリの日常生活や芸能・儀礼の描写など画家ならではの観察力による描写は評価が高く、21世紀となった今日でもバリを研究しようとする人たちにとって注目すべき著作であり続けている。
1936, NY, 64 pages, 250 x 323 x 4
ミゲル・コバルビアスが描いたバリ女性の肖像画が表紙を飾る『VANITY FAIR FENRUARY 1936』。
ヴァニティ・フェアの目次ではこの肖像画のタイトルは「BALI BEAUTY」となっているが、正式には「PORTRAIT OF AYU KTUT」であり、コバルビアスは彼女アユ・クトゥットの肖像画を他にも描いている。
ヴァニティ・フェア1936年2月号は、以前『THE VANITY FAIR BOOK』をブログで紹介した際に少し触れているが、1936年3月号からは『VOGUE』に統合されたので今号が最終号となった。誌面では「重要なお知らせ」として社主コンデ・ナスト (Conde Nast) の文章で、ヴォーグに統合されるがヴァニティ・フェアの一定の編集内容(主な写真家、芸術家、作家たち)は引き継がれ、月2回の刊行となり、最初の合併号3月1日号は2月28日にニュース・スタンドで販売されると伝えている。
1983年の復活まで長き眠りに入る直前の記念すべき最終号ではエドワード・スタイケン (Edward Steichen) によるポートレイト、パオロ・ガレット (Paolo Garretto) によるジョセフィン・ベーカーの諷刺画、マリー・ローランサン (Marie Laurencin) の版画を収録するなど以前と変わらず興味深い内容となっている。
本の状態:ソフトカバー。カバーに緩いシワ、擦れによる小キズあり。背部分上部に少しキズあり。内部ページの底部角に緩く折り目、ページを繰ることによるシワあり。その他は切り抜き、書き込みなく経年変化程度。
価格:SOLD
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by booksandthings
| 2022-12-09 12:00
| 雑誌・季刊誌