2023年 04月 10日
UNSEEN VERSAILLES / Deborah Turbeville (Photographs), Louis Auchincloss (Introduction) |
ニューヨーク・ウォール街の企業弁護士だったルイス・オーキンクロス (Louis Auchincloss) は、主に自分の熟知した世界、ニューヨークの上流社会(オールド・ニューヨーク)とニュー・イングランドの社会を描いた作家として知られている。それは自身も上流階級であることを意味し、親戚をたどるとジョン・D・ロックフェラーと共にスタンダード石油を興したオリヴァー・ジェニングス (Oliver Burr Jennings) に繋がり、祖父の3度目の結婚相手がジャネット・リー・ブーヴィエ (Janet Lee Bouvier) だったこともあり、彼女が最初の結婚でもうけた娘ジャックリーン・ケネディ・オナシス (Jacqueline kennedy Onasis) とも繋がる。
ルイス・オーキンクロスは、得意とするニューヨークを舞台としない3作の小説を1980年代初めに上梓している。そのひとつが1981年に刊行された『THE CAT AND THE KING』で、舞台はフランス国王ルイ14世のヴェルサイユ宮殿である。そのきらびやかな小説は事実とフィクションを交えた3つのエピソードから成り、タイトルの「CAT」にあたるナレーター役はフランス貴族ルイ・ド・ルヴロア (Louis de Rouvroy)、サン・シモン侯爵で、宮廷での生活を観察し、太陽王ルイ14世の治世について見たり感じたりしたことを回顧録『MEMOIRS』として出版した実在の人物である。『THE CAT AND THE KING』はサン・シモン侯爵の『MEMOIRS』の延長として考え書かれており、ヨーロッパの驚異だったルイ14世のヴェルサイユの宮廷に魅せられたオーキンクロスの力作と言える。また、オーキンクロスは『THE CAT AND THE KING』と同年にジャックリーン・ケネディの仲介により、ヴェルサイユ宮殿を舞台とした写真集の序文を書いている。その序文はフィクションを加えることなく、伝えられた歴史に基づいたものだった。
1981, NY, 160 Pages, 235 x 310 x 20
ニュー・イングランド出身のファッション写真家デボラ・ターバヴィル (Deborah Turbeville) がヴェルサイユ宮殿の消えた世界を呼び起こす。
フランスの歴史上、権力やロマンス、そして悲劇の座であった王室のシャトーは永遠なる魅力の対象である。そのヴェルサイユの神秘と素晴らしさに惹かれたデボラ・ターバヴィルは一般の人々が見たことのない宮殿のエリアにカメラを向けた。その場所はある意味ヴェルサイユの最も親密で私的な部分を表している。ポワズリーと石、秘密の隠れ部屋、私室、さびれた王室の倉庫。裏口、舞台裏でヴェルサイユの幽霊が住む迷宮に私たちを導く。果てしなく続く隠れた無人の部屋、そこに今も生きているぼんやりとした色あせた形体、幽霊が部屋に集まり、遺棄されたオブジェや残骸と共に逃亡者の証人となる。
それらロマンチックな写真の数々とのバランスを取るかのようにルイス・オーキンクロスのフォーマルなヴェルサイユの肖像について書かれた序文。これが写真家と作家によるユニークな芸術的かつ歴史的なドキュメント写真集『UNSEEN VERSAILLES』。
巻末のデボラ・ターバヴィルによる謝辞の最後にはジャックリーン・ケネディ・オナシスがヴェルサイユの隠された部屋を撮影するというインスピレーションに満ちたコンセプトを持って来てくれ、制作上のフラストレーションを乗り越えて熱心にサポートし、機知と知性を写真集に与えてくれたことに対して心から感謝したいと思うと書かれている。
本の状態:ジャケットの縁部分に破れ、シワ、キズあり。本体の地部分に吹き付けたような点状の赤いインク汚れあり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2023-04-10 12:00
| 写真