2022年 10月 15日
TRACES OF MAN / Herbert Spencer |

『TYPOGRAPHICA』は、そのタイトルが示すようなタイポグラフィだけに焦点を当てたり、狭く専門的すぎることはなく、創刊時25歳だった早熟なハーバート・スペンサー自身の興味を追求する、寄稿者は揃っていたもののある意味において「one-man operation」的な出版物といえる。
最初のシリーズではクルト・シュヴィッタース (Kurt Schwitters) 、エル・リシツキー (El Lissizky) 、アレクサンドル・ロトチェンコ (Alexander Rodchenko) 、ポール・シュイテマ (Paul Schuitema) 、ピート・スヴァルト (Piet Zwart) 、ヘンリク・ベルレウィ (Henryk Berlewi) 、マックス・ビル (Max Bill) 、ヘルベルト・バイヤー (Herbert Bayer) などグラフィック・アートの進路開拓に名を残したモダニストたちを解説したりしつつも、対照的に競馬のプログラムの印字や墓石に刻まれた文字 (Tombstone Lettering) 、プリントのための字型、英国の国章・紋章についてなどのトラディショナルなサブジェクトにも関心を示し誌面で取り上げている。
最初のシリーズ(オリジナル・シリーズ)に続いて1960年から67年にかけて刊行されたより手の込んだ第2シリーズ(ニュー・シリーズ)では、写真がサブジェクトとしてだけでなく、ヴィジュアル・ツールとして取り上げられ、文字と同様に重要な位置を占め、カメラはペンに比肩することとなる。
ハーバート・スペンサー自身、1960年頃からローライフレックスやペンタックスの35ミリカメラを購入し写真に熱中した。
1967, London, 24 plates, 235 x 260 x 8
1967年までギリシャ、イタリア、オランダ、アイルランドなど撮影旅行に出掛け、暗室で長い夜を過ごしたハーバート・スペンサーだったが、他の数多くのプロジェクトのために写真にあまり時間を割くことができなくなった。その年、撮りためた写真の中から24点を選び、ルンド・ハンフリーズから写真集として上梓したのが本書『TRACES OF MAN』。
数多くの名前や文字が刻まれた公園のベンチ、ポスターやサインボード、落書き、装飾、経年による剥離キズなどをまとった壁、大地に描かれたような小道、絶え間ないリズムに積み上げられた泥炭、フェンスとして使われた鉄製のベッドの背もたれ部分、巡礼者たちの痕跡、補強された木製ドアなどの収録作品には「パターン (Pattern)」という共通点があり、ハーバート・スペンサーが序文で述べているように、その「パターン」は形式的ではなく表現的なものを捉えることだった。
剥がれたポスターのグラフィックを用いた『TRACES OF MAN』のカバー・デザインは、ハーバート・スペンサーの17点の写真を掲載した1963年12月号ニュー・シリーズ『TYPOGRAPHICA 8』のカバー・デザインと同じ写真が用いられている。
英国の写真家ビル・ブラント (Bill Brandt) のライティングと黒白の力強いグラフィック・コントラストに影響を受けたハーバート・スペンサーの最初で最後のの写真集である。
本の状態:プリンテッド・ハードカバー。カバーにシミ、ヤケあり。内部ページは経年変化程度。
価格:SOLD
Typographica 8, December 1963
by booksandthings
| 2022-10-15 12:00
| 写真











