2017年 05月 28日
日本の文様とホテルオークラ THE INDIGENOUS PATTERNS AND HOTEL OKURA / ホテルオークラ HOTEL OKURA |
序文
東京赤坂の高台にホテルオークラが産声をあげてから、すでに2ヵ年余が過ぎた。
故大倉喜七郎会長が、日ごろ考えておられたホテルの建設を提案されたのにもとづいて、大成観光株式会社が設立されたのは昭和33年であった。それから3年半の間、ホテル建設に全力をつくして、昭和37年5月に開業のはこびとなった。
近年、国際交流の活発化に伴って、ホテルの重要性はいっそうその度を増している状況を考え、この際特に、建築および室内装飾については、日本美術の粋を集めたホテルにしようという故会長や私の構想が骨子となって、ここに日本的感覚の豊かなホテルが誕生したのである。
建築にあたっては、谷口吉郎氏を委員長とし、小坂秀雄・清水一・岩間旭・伊藤喜三郎の諸氏による設計委員会を設け、さらに細部の意匠については、意匠委員会を設けて、溝口三郎・繁岡鑿一・広井力・岩田清道・県治郎の諸氏に委員をお願いし、さらに田中親美・安田靫彦・故富本憲吉・榎本干花俊・岩田藤七氏等諸彦のご協力を得、客室部門およびその装備品については、ウィリアム・シュラガー氏・柴田陽三氏の担当で案を練った。そして設計および建築のとりまとめには、ホテルオークラ建築部長の柴田陽三氏があたり、工事は大成建設株式会社の施工によるものである。ホテルの所在地は、東京都港区赤坂葵町の高台で、階上からは東京湾まで見わたせる景勝の地である。ホテルは、この高低の多い土地を利用した地下2階、地上10階の建物で、地形の持ち味がよくプランに生かされてる。
さて、昭和39年度は、9月に103か国が参加する国際通貨基金(IMF)および世界銀行等の4団体の総会が当ホテルで行われ、10月にはオリンピックも開催される記念すべき年である。
このときにあたり、当ホテルの意匠を広く国の内外に紹介するとともに、日本の古美術の一部と、日本的意匠が持つ雰囲気を理解していただくために、ここに「日本の文様とホテルオークラ」なる図録を刊行することとなった。
内容は、日本の自然、日本の建築、日本の文様、各国意匠の4項目に大別し、編集してある。これによって、ホテルオークラの意匠と、それに関係ある古典美術および日本の風物を理解していただくとともに、古典の現代建築への再生の一つのすがたをご覧いただきたいと念願するしだいである。昭和39年8月
野田岩次郎
ホテルオークラ(大成観光株式会社)代表取締役社長 総支配人
















日本の文様とホテルオークラ THE INDIGENOUS PATTERNS AND HOTEL OKURA / ホテルオークラ HOTEL OKURA
1964, Tokyo, 103 pages, 228 x 300 x 20
ファッション・デザイナーを含めデザイン・コンシャスな人たちに騒がれ、惜しまれつつ建て替えに入り、2019年に新本館が開業するホテル・オークラ(本館)。「Fashion means change」と言ったのは、カール・ラガーフェルド氏。
「古き良き時代」というものは、冷静に考えてみるとそうでもないことがあるのだが(古き時代も悪しきことはあった)、ただなくなって寂しいと思うものはあるだろう。
本書は、序文で野田岩次郎氏が述べているとおり「古典の現代建築への再生」を示す1冊となっている。共同制作は、新建築社。写真は、藤本四八・二川幸夫・川澄明男・大辻清司ら。
本の状態:帙やスリップケースはない。タイトルページの仕切り紙(和紙)に少し茶シミあり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD
東京赤坂の高台にホテルオークラが産声をあげてから、すでに2ヵ年余が過ぎた。
故大倉喜七郎会長が、日ごろ考えておられたホテルの建設を提案されたのにもとづいて、大成観光株式会社が設立されたのは昭和33年であった。それから3年半の間、ホテル建設に全力をつくして、昭和37年5月に開業のはこびとなった。
近年、国際交流の活発化に伴って、ホテルの重要性はいっそうその度を増している状況を考え、この際特に、建築および室内装飾については、日本美術の粋を集めたホテルにしようという故会長や私の構想が骨子となって、ここに日本的感覚の豊かなホテルが誕生したのである。
建築にあたっては、谷口吉郎氏を委員長とし、小坂秀雄・清水一・岩間旭・伊藤喜三郎の諸氏による設計委員会を設け、さらに細部の意匠については、意匠委員会を設けて、溝口三郎・繁岡鑿一・広井力・岩田清道・県治郎の諸氏に委員をお願いし、さらに田中親美・安田靫彦・故富本憲吉・榎本干花俊・岩田藤七氏等諸彦のご協力を得、客室部門およびその装備品については、ウィリアム・シュラガー氏・柴田陽三氏の担当で案を練った。そして設計および建築のとりまとめには、ホテルオークラ建築部長の柴田陽三氏があたり、工事は大成建設株式会社の施工によるものである。ホテルの所在地は、東京都港区赤坂葵町の高台で、階上からは東京湾まで見わたせる景勝の地である。ホテルは、この高低の多い土地を利用した地下2階、地上10階の建物で、地形の持ち味がよくプランに生かされてる。
さて、昭和39年度は、9月に103か国が参加する国際通貨基金(IMF)および世界銀行等の4団体の総会が当ホテルで行われ、10月にはオリンピックも開催される記念すべき年である。
このときにあたり、当ホテルの意匠を広く国の内外に紹介するとともに、日本の古美術の一部と、日本的意匠が持つ雰囲気を理解していただくために、ここに「日本の文様とホテルオークラ」なる図録を刊行することとなった。
内容は、日本の自然、日本の建築、日本の文様、各国意匠の4項目に大別し、編集してある。これによって、ホテルオークラの意匠と、それに関係ある古典美術および日本の風物を理解していただくとともに、古典の現代建築への再生の一つのすがたをご覧いただきたいと念願するしだいである。昭和39年8月
野田岩次郎
ホテルオークラ(大成観光株式会社)代表取締役社長 総支配人
















日本の文様とホテルオークラ THE INDIGENOUS PATTERNS AND HOTEL OKURA / ホテルオークラ HOTEL OKURA
1964, Tokyo, 103 pages, 228 x 300 x 20
ファッション・デザイナーを含めデザイン・コンシャスな人たちに騒がれ、惜しまれつつ建て替えに入り、2019年に新本館が開業するホテル・オークラ(本館)。「Fashion means change」と言ったのは、カール・ラガーフェルド氏。
「古き良き時代」というものは、冷静に考えてみるとそうでもないことがあるのだが(古き時代も悪しきことはあった)、ただなくなって寂しいと思うものはあるだろう。
本書は、序文で野田岩次郎氏が述べているとおり「古典の現代建築への再生」を示す1冊となっている。共同制作は、新建築社。写真は、藤本四八・二川幸夫・川澄明男・大辻清司ら。
本の状態:帙やスリップケースはない。タイトルページの仕切り紙(和紙)に少し茶シミあり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2017-05-28 12:00
| デザイン