2020年 02月 10日
PICASSO A ANTIBES / Michel Sima, Paul Eluard, Jaime Sabartes |
非常に記憶力の優れたピカソのかつての伴侶だったフランソワーズ・ジロー (Francoise Gilot) の著書によると、この美術館はかつてアンティーブ美術館と呼ばれ、ナポレオンに関する文書が財産程度の僅かな芸術品しかない美術館にふさわしくない建物だったそうだ。それが今日の姿に変わるきっかけはこうだった。
1946年8月、ゴルフ・ジュアン (Golfe-Juan) の友人宅に間借りしていたピカソとフランソワーズのもとに友人の彫刻家で写真家のミシェル・シマ (Michel Sima) がやってきて、ピカソが仕事をしたくなる場所がある、と彼らに話した。その場所がアンティーブ美術館の2階の大きな部屋だった。管理人に紹介されたピカソは、大はしゃぎで「ここにいる間は、絵画を描くつもりはない。あなたのために、あなたの美術館を飾るつもりだ」と言った。
そして絵画の絵具を少しパリに注文し、その間にシマと港に降りて行って、ボート用のペンキを仕入れ、ボート用のペンキはだいたい木に塗るものだからということでベニヤ板を手に入れ、またボート用のペンキは、ファイバーセメントの大きなパネルにもうまく合うだろうからとそれも注文、加えてペンキ屋のブラシも購入し、9月と10月にわたって仕事をし、現在美術館にある絵画のほとんど大半を描き上げたそうだ。
PICASSO A ANTIBES / Michel Sima, Paul Eluard, Jaime Sabartes
1948, Paris, 127 pages, 254 x 334 x 15
写真はミシェル・シマ、序文をピカソの秘書だったハメイ・サバルテス (Jaime Sabartes)、そして各図版に寄せた文章をピカソが詩人の中で最も親しくしていたポール・エリュアール (Paul Eluard) が担当した『アンティーブのピカソ』。
画架に立てられた『La joie de vivre』などの作品や鳥や動物に取り囲まれるのが好きなピカソが可愛いがっていたフクロウ(シマがアンティーブ美術館の片隅で見つけてきた)をモチーフとした作品『Nature morte a la chouette et aux trois oursins』とピカソ、フクロウとのスリーショット(なんだか可笑しい)を含めピカソのアンティーブ美術館で制作していた様子を伝える興味深い1冊である。
本の状態:オリジナル・パラフィン・カバーなし。ソフトカバーにフランス装丁。カバー背部分に破れ、キズ、背部分上部にシミ、縁部分に擦れキズあり。内部ページにシワ、数ページの縁部分に破れ、欠けあるものの図版には影響はない。製本の関係で綴じは緩め。その他は経年変化程度。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2020-02-10 12:00
| 写真集 作家別作品集