2018年 09月 25日
A CRAFTSMAN'S HANDBOOK / Henry Lapp |
用事でその近くに行くことがあれば、その足で是非立ち寄ってみたい神戸の竹中大工道具館。
近年、京都府大山崎の天王山のふもとに建つ、建築家藤井厚二の自邸『聴竹居』を譲り受け、文化事業にも熱心な大手ゼネコン竹中工務店が設立した日本で唯一の大工道具の博物館である。
その竹中大工道具館のホームページを日本でもお馴染みのイラストレーター、フィリップ・ワイズベッカー (Philippe Weisbecker) による大工道具のドローイングが飾っている。あの工作少年・少女を魅了するフランス人である。これらの大工道具のドローイングは、2002年に京都を訪れた際に路地裏の店で見かけた日本の手工具を描いた作品のバリエーションだろう。
ところでフィリップ・ワイズベッカーは、1980年代後半にペンシルベニア州に週末用の別荘を持っていたそうだ。その地でよく訪れたのは、見慣れない種類の家具を置く地元のアンティークショップや田舎風の家だったという。ペンシルベニア州は、ドイツ系住民が多く住む州。ペンシルベニア・ダッチと呼ばれている文化圏の人々。見慣れない種類の家具とは、そのペンシルベニア・ダッチの家具だったのかもしれない。
1975, Philadelphia, 47 plates, 207 x 120 x 10
1862年アーミッシュの両親の間にペンシルベニアのランカスター・カントリーで生を受けたヘンリー・ラップ (Henry Lapp) 。
生まれつき耳が少々不自由であり、うまく話せなかったこともあり、幼少時は絵を描いて人と意思疎通をはかったといわれている。
1890年に大工となり、店を構え、自作の家具等を販売した。それらは、田舎家や農場で使用される日常的なもの。デスク、チェスト、シード・ボックス、フラワー・スタンド、はしご、バギー、橇、おもちゃ、ゲームなど。それらの作品を通して、ヘンリー・ラップは19世紀のアメリカの大工・家具職人として最も知られる人物の一人となった。
本書は、そのヘンリー・ラップが描き、所持していた商業カタログのような、はたまたアイデア・ブックのようなものを元にして刊行された1冊である。
ペンと水彩で描かれた、どこかフィリップ・ワイズベッカーに似ていなくもない、工作好きを魅了するドローイングの数々。ヘンリー・ラップは、これらのドローイングを店に来たお客に見せたり、また時には荷馬車を駆ってフィラデルフィアの街まで出稼ぎに行った。
現在、ヘンリー・ラップが手掛けた家具類の多くは寄贈により、彼が描いた数々のドローイングと共に、本書を刊行したフィラデルフィア美術館に収蔵されている。そしていくつかの作品は、今でもペンシルベニアの田舎家で大切に使われているのだろう。
本の状態:フォルダーに破れ(1か所裏側からテープ補修)、擦れ、汚れ、シミあり。本体は経年変化程度。
価格:SOLD
ネズミ捕り器だそう。
by booksandthings
| 2018-09-25 12:00
| インテリア・ファニチャー