2018年 05月 28日
DODOITZU / Paul Claudel, Rihakou Harada |
日清・日露の時代、日東男児の敵愾心は、火より激しく燃え、国民の元気満ち溢れ、活気が社会に漲ったそうだ。
何事にも敏感な花柳界も豪い景気となった。お茶屋へ行く機会は、眼の回る忙しい中でも極めて多くあった。元老・元勲・大臣・軍人・役者に力士、紳士に紳商・・・。
初代内閣総理大臣伊藤博文も例外ではない。例外ではないどころか随分とお通いになったそうだ。そして当意即妙、出放題の都々逸。
即席急造の珍文句、創作か、新製か、悪口の都々逸は沢山ご承知で、代わる代わる鼻歌になって溢れ出た。
「芸者の親切、縁日の植木、水をやらなきや枯れたがる」
この都々逸は伊藤公のオハコでお目にかかかる度に聞かされることになり、芸者たちは憤慨して抗議を申し立てた事などもあったそうだ。













DODOITZU / Paul Claudel, Rihakou Harada
1945, Paris, Unpaged, 215 x 280 x 12
フランスの劇作家・詩人であり、外交官でもあったポール・クローデル (Paul Claudel)。
日本文化に興味を持ち、1921年から1927年にかけて駐日大使として日本で暮らした。1927年に刊行された日本を主題とした著作『L'OISEAU NOIR DANS LE SOLEIL LEVANT(朝日の中の黒鳥)』は藤田嗣治の挿絵本の代表作の一つとしても知られている。
そのポール・クローデルが太平洋戦争で日本が敗戦した年にフランスで刊行した日本の俗謡を26首まとめた1冊。
都々逸を含めた江戸時代から明治時代の俗謡をフランス語・英語に翻訳し、在仏の日本人画家原田梨白 (Rihaku Harada, 1890-1954) によるグラフィカルで味のある挿絵を交えて構成された本書は、ポール・クローデルの日本への想いが伝わるものとなっている。
第二次世界大戦以前にフランスで生活した日本人画家として藤田嗣治や長谷川潔らに比べて知る人の少ない原田梨白については、以前ブログで紹介した『LISTE DES GRAND VINS 1950』にも記しているので省略するが、本書のポール・クローデル序文に原田についての言及があるのでその箇所以下に抜粋する。
*序文の和訳は、日本にお住いの原田梨白の姪御さんから頂戴した。
「● それだけか?とんでもない!遠い国で生まれた音節は、フランスの詩人の魂を揺らしながら喉を響かせ、そしてさらに、その歌に聞き入る≪誰か≫を見つけるのである。その≪誰か≫とは誰?その誰かとは、まさに、一人の日本人、私たちの国に永く暮らしている日本人画家、ハラダ・リハク氏に他ならない。彼はその歌を、どのように聴いたであろうか?そうだ、画家特有の聴き方、つまり、彼の眼と絵筆で聴いたに違いない。魔法にかけられたような彼の指先によって、一度異国の言葉に移し替えられた歌は再び祖国の面影を取り戻す。ここに集められた信じがたいほどに魅力的な絵の数々は、神聖な真実に満ち満ちて失われた時と夢を再び結びつけたのだ。ハラダ氏の芸術は、禅 - つまり、堅固さと道徳的な威信と妖術的な力強さとを併せ持つ禅 - に似ている。麗しき小島にも似たこれらの絵画が白い絹地から浮かび上がる様は、丁度、かの日本が懐深く慈しんできた内なる海から、光に満ちた霧がゆっくりと立ち昇る様のようだ。ああ、彼方の地の密やかな神学に彩られた意味深い幻影よ!旅は終わり、すべての曲り道は遮られた。遥かなる国の詩歌は、生まれおちた後しばらくは世俗のものとなったが、今や再び天国を現出する歌となる。日本から一度遠ざかった波は、漂うような音楽のうねりに身を任せながら、光の反映を再び遥かな祖国、日本へと押し戻すのである。」1944年3月23日 パリにて
本の状態:ソフトカバー。和綴じ。パラフィン・カバー(おそらくオリジナルではない)に破れ、シミ。カバーに少しシワあり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD

何事にも敏感な花柳界も豪い景気となった。お茶屋へ行く機会は、眼の回る忙しい中でも極めて多くあった。元老・元勲・大臣・軍人・役者に力士、紳士に紳商・・・。
初代内閣総理大臣伊藤博文も例外ではない。例外ではないどころか随分とお通いになったそうだ。そして当意即妙、出放題の都々逸。
即席急造の珍文句、創作か、新製か、悪口の都々逸は沢山ご承知で、代わる代わる鼻歌になって溢れ出た。
「芸者の親切、縁日の植木、水をやらなきや枯れたがる」
この都々逸は伊藤公のオハコでお目にかかかる度に聞かされることになり、芸者たちは憤慨して抗議を申し立てた事などもあったそうだ。













1945, Paris, Unpaged, 215 x 280 x 12
フランスの劇作家・詩人であり、外交官でもあったポール・クローデル (Paul Claudel)。
日本文化に興味を持ち、1921年から1927年にかけて駐日大使として日本で暮らした。1927年に刊行された日本を主題とした著作『L'OISEAU NOIR DANS LE SOLEIL LEVANT(朝日の中の黒鳥)』は藤田嗣治の挿絵本の代表作の一つとしても知られている。
そのポール・クローデルが太平洋戦争で日本が敗戦した年にフランスで刊行した日本の俗謡を26首まとめた1冊。
都々逸を含めた江戸時代から明治時代の俗謡をフランス語・英語に翻訳し、在仏の日本人画家原田梨白 (Rihaku Harada, 1890-1954) によるグラフィカルで味のある挿絵を交えて構成された本書は、ポール・クローデルの日本への想いが伝わるものとなっている。
第二次世界大戦以前にフランスで生活した日本人画家として藤田嗣治や長谷川潔らに比べて知る人の少ない原田梨白については、以前ブログで紹介した『LISTE DES GRAND VINS 1950』にも記しているので省略するが、本書のポール・クローデル序文に原田についての言及があるのでその箇所以下に抜粋する。
*序文の和訳は、日本にお住いの原田梨白の姪御さんから頂戴した。
「● それだけか?とんでもない!遠い国で生まれた音節は、フランスの詩人の魂を揺らしながら喉を響かせ、そしてさらに、その歌に聞き入る≪誰か≫を見つけるのである。その≪誰か≫とは誰?その誰かとは、まさに、一人の日本人、私たちの国に永く暮らしている日本人画家、ハラダ・リハク氏に他ならない。彼はその歌を、どのように聴いたであろうか?そうだ、画家特有の聴き方、つまり、彼の眼と絵筆で聴いたに違いない。魔法にかけられたような彼の指先によって、一度異国の言葉に移し替えられた歌は再び祖国の面影を取り戻す。ここに集められた信じがたいほどに魅力的な絵の数々は、神聖な真実に満ち満ちて失われた時と夢を再び結びつけたのだ。ハラダ氏の芸術は、禅 - つまり、堅固さと道徳的な威信と妖術的な力強さとを併せ持つ禅 - に似ている。麗しき小島にも似たこれらの絵画が白い絹地から浮かび上がる様は、丁度、かの日本が懐深く慈しんできた内なる海から、光に満ちた霧がゆっくりと立ち昇る様のようだ。ああ、彼方の地の密やかな神学に彩られた意味深い幻影よ!旅は終わり、すべての曲り道は遮られた。遥かなる国の詩歌は、生まれおちた後しばらくは世俗のものとなったが、今や再び天国を現出する歌となる。日本から一度遠ざかった波は、漂うような音楽のうねりに身を任せながら、光の反映を再び遥かな祖国、日本へと押し戻すのである。」1944年3月23日 パリにて
本の状態:ソフトカバー。和綴じ。パラフィン・カバー(おそらくオリジナルではない)に破れ、シミ。カバーに少しシワあり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD

by booksandthings
| 2018-05-28 12:00
| イラストレーション

