2017年 02月 25日
THE BOWERY / Michael D. Zettler |
「ああ わざわい多きかな 貧たる身」
と言ったのは英国の詩人ジェフリー・チョーサーであったか。
THE BOWERY / Michael D. Zettler
1975, NY, 150 pages, 195 x 265 x 15
いくつかの洒落た施設や店の開業によってその地区が変化するニューヨーク。
かつてパンクの聖地だったライブハウス『CBGB』のあったバワリーもしかり。21世紀になって『New Museum』や『The Bowery Hotel』などがオープンし、散策する街になってきたのはニューヨーカーや旅行者なら皆さんご存知。
本書は、そんなバワリー地区にかつて根付いていた連中を取材したドキュメンタリー写真集である。
Michael D. Zettler は、1970年代にニコンのカメラを携えバワリー地区を巡り、その地で生活するホームレスやアル中たちを撮影、インタビュー。その成果を見開きページに彼らの写真と肉声をレイアウトして1冊にまとめた。
チョーサーと同じく英国人の作家ジョージ・オーウェルには、パリとロンドンでの貧乏生活について書いた他人事でもないユニークな著作がある。
- 貧乏に近寄って見ると一つ発見する。そしてそれが、その他もろもろの発見のいくつかと相殺しあっているということだ。なるほど退屈とか、ややこしく手の込んだ低劣さ、飢餓のはじまりを発見するが、また、埋め合わせのつく、貧乏の偉大なる一面、そういうものも発見する。貧乏は行く先のことを抹殺するという事実だ。一定の限界はあるが、金を持っているのが少なければ少ないほど気が楽だというのは、事実上での真理だ。世に100フラン持っていたら、この上もない臆病風に身を晒すことになるし、3フランしかなければ、どうでもなれということになる。3フランあれば明日まで食える、それ以上は考えようにも考えられぬ。退屈だが心配はいらない。ぼんやりと思うだけ。1日ふつかすりゃあ、あの世行きだろう、怖くないかい?すると、頭の中は、何か他事の方へふらふらと行ってしまう。バター付きパンの食事が、ある程度まで鎮痛剤の役をしてくれる。それに、貧乏にも非常な慰めとなるもう一つの感情が存在する。不景気で困ったことのある人なら誰でもそれを経験したものと信ずる。俺もとうとう本物のどん詰まりに来たわいと思い知った時の、何かホッとした感じ、楽しさに近い感じだ。”破滅行”なんてことをしょっちゅう口にしてきた、そう、その破滅のところにも、とうとうやってきた。俺は破滅だ、だがよ、俺は頑張る、へこたれることはないんだ。そういった居直りが不安をいくらかも取り除いてくれることになる。-
『THE BOWERY』の写真と文章を見るとそんな感じ・・・以下でもある・・・。
「ゆりかごから墓場まで」とは、英国の有名な福祉政策のスローガンだったが、ここバワリーでは「路上から墓場まで」は面倒をみてくれるようだ。ただし、墓碑はなく、書類や棺桶には "Unknown white male" などとだけ記されているにすぎないのだが・・・。
本の状態:ソフトカバー。カバーに擦れ、キズ、角部分に1箇所折れあり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD
と言ったのは英国の詩人ジェフリー・チョーサーであったか。
THE BOWERY / Michael D. Zettler
1975, NY, 150 pages, 195 x 265 x 15
いくつかの洒落た施設や店の開業によってその地区が変化するニューヨーク。
かつてパンクの聖地だったライブハウス『CBGB』のあったバワリーもしかり。21世紀になって『New Museum』や『The Bowery Hotel』などがオープンし、散策する街になってきたのはニューヨーカーや旅行者なら皆さんご存知。
本書は、そんなバワリー地区にかつて根付いていた連中を取材したドキュメンタリー写真集である。
Michael D. Zettler は、1970年代にニコンのカメラを携えバワリー地区を巡り、その地で生活するホームレスやアル中たちを撮影、インタビュー。その成果を見開きページに彼らの写真と肉声をレイアウトして1冊にまとめた。
チョーサーと同じく英国人の作家ジョージ・オーウェルには、パリとロンドンでの貧乏生活について書いた他人事でもないユニークな著作がある。
- 貧乏に近寄って見ると一つ発見する。そしてそれが、その他もろもろの発見のいくつかと相殺しあっているということだ。なるほど退屈とか、ややこしく手の込んだ低劣さ、飢餓のはじまりを発見するが、また、埋め合わせのつく、貧乏の偉大なる一面、そういうものも発見する。貧乏は行く先のことを抹殺するという事実だ。一定の限界はあるが、金を持っているのが少なければ少ないほど気が楽だというのは、事実上での真理だ。世に100フラン持っていたら、この上もない臆病風に身を晒すことになるし、3フランしかなければ、どうでもなれということになる。3フランあれば明日まで食える、それ以上は考えようにも考えられぬ。退屈だが心配はいらない。ぼんやりと思うだけ。1日ふつかすりゃあ、あの世行きだろう、怖くないかい?すると、頭の中は、何か他事の方へふらふらと行ってしまう。バター付きパンの食事が、ある程度まで鎮痛剤の役をしてくれる。それに、貧乏にも非常な慰めとなるもう一つの感情が存在する。不景気で困ったことのある人なら誰でもそれを経験したものと信ずる。俺もとうとう本物のどん詰まりに来たわいと思い知った時の、何かホッとした感じ、楽しさに近い感じだ。”破滅行”なんてことをしょっちゅう口にしてきた、そう、その破滅のところにも、とうとうやってきた。俺は破滅だ、だがよ、俺は頑張る、へこたれることはないんだ。そういった居直りが不安をいくらかも取り除いてくれることになる。-
『THE BOWERY』の写真と文章を見るとそんな感じ・・・以下でもある・・・。
「ゆりかごから墓場まで」とは、英国の有名な福祉政策のスローガンだったが、ここバワリーでは「路上から墓場まで」は面倒をみてくれるようだ。ただし、墓碑はなく、書類や棺桶には "Unknown white male" などとだけ記されているにすぎないのだが・・・。
本の状態:ソフトカバー。カバーに擦れ、キズ、角部分に1箇所折れあり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2017-02-25 12:00
| 写真集