2017年 09月 07日
PARIS, TEXAS / Wim Wenders (Director), Sam Shepard (Writer), Chris Sievernich (Editor) |
1986年、パリのポンピドゥーセンターにて映画監督としてでなく写真家として展覧会が開催されたドイツ人ヴィム・ヴェンダース。その1か月余り開催された写真展『WRITTEN IN THE WEST, PHOTOGRAPHIES DE WIM WENDERS』を機に1987年に刊行された同名タイトルの写真集は、初版に15枚の新たな写真が加わり今現在、改訂版として流通している。
このカラー写真集の名作『WRITTEN IN THE WEST』が生まれるきっかけとなったのが、ヴェンダース監督作品の『パリ、テキサス』であったことは、ヴェンダース監督のファン、あるいは映画通の方であれば承知のこと。
PARIS, TEXAS / Wim Wenders (Director), Sam Shepard (Writer), Chris Sievernich (Editor)
1984, Berlin, 511 pages, 193 x 240 x 23
夜の中で、彼の足が汗ばんでした。いろいろな物の存在を感じとれた - 自動拳銃、牛、鉄条網、ダイス、夜の牧場で懐中電灯も持たず馬に乗ること、夜の草原に突き立てられた柵。
彼は部屋の明かりをぜんぶ消して、二つのベッドの間の床に横たわった。足が汗ばんでいた。リアリスティック製のテープ・レコーダーのスイッチを殴りつけると、スティーヴィー・ワンダーの声が闇に答えた - 『ソングス・イン・ザ・キー・オブ・ライフ』
彼はアパッチ族の砂絵が壁の上に、どこからともなく現れてくるのを見た。土から採られた様々な色 - うすいオレンジ色の砂、チョコレート色の表土、涙の色のようなうすい青。
でっかいアワビがピストルの銃床の影でかすかに光るのが見えた。バラのような光の糸。ぐるぐる回っていた。彼自身の心臓が見えた。
男の、彼のただ一人の女に対する、悪魔のような執着を感じ取れた。
5/79 San Marcos, Texas
Sam Shepard 『Motel Chronicles』p.48
City Lights Books, San Francisco, 1982
企画から完成まで苦難の道のりを経て公開されたヴィム・ヴェンダース監督作品『ハメット』の制作過程で知り合ったサム・シェパードとヴェンダース。二人は映画を作ることで意気投合し、サム・シェパードは、まだ出版前の『モーテル・クロニクルズ』の原稿をヴェンダースに渡し、共同で脚本を仕上げていった。その二人の脚本を元に制作された作品が1984年にカンヌ映画祭でグランプリを獲得した『パリ、テキサス』である。
本書はその『パリ、テキサス』のスクリプトと画像、撮影クルー、キャスト等を511ページに亘り収録した1冊。砂漠を歩く一人の中年男のシーンの画像に始まり、息子と母親の出会いまで、「最後のアメリカ映画」と評される『パリ、テキサス』のシークエンス。ページを繰るたびにタブローが蘇る。
本の状態:ソフトカバー。カバーに擦れによる汚れ、シワあり。背部分にシワあり。天部分にマジック・ペンによる1本線あり。後側見返しにバーコード・シール。内部ページ211から224の上部余白部分に5ミリ程度の破れあり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2017-09-07 12:00
| サーカス、音楽、舞台、映画