2016年 08月 31日
ARMED SERVICE EDITION NO. 676 ESQUIRE'S JAZZ BOOK 1944 / PAUL EDUARD MILLER |

現在、ベルリンのベーベル広場にある焚書モニュメント。広場の石畳にガラス板をはめ込み、その下の空間に空っぽの書棚が設置されている。アーティストが多く住み、ギャラリーがひしめくベルリンの街ならではのコンセプチュアルなモニュメントである。
1933年5月10日、この場所で ❝非ドイツ的❞ と断定された数多くの書籍や文書が燃え上がる薪の中に消えていった。
本は剣より強し。無類の読書家ヒトラーはそのことをよく知っていた。第二次世界大戦下、ドイツ及びドイツの支配下にあった国々で1億冊以上の本が、焚書や爆撃などによって失われたと言われている。
ドイツを含む枢軸国に対する連合国のひとつ、アメリカはこの戦争に対し兵士、武器、そして書籍をもって対抗した。











ARMED SERVICE EDITION NO. 676 ESQUIRE'S JAZZ BOOK 1944 / PAUL EDUARD MILLER
1945, NY, 351 pages, 138 x 98 x 13
1939年当時、アメリカの兵士の数はわずか17万4千人。ヨーロッパで戦火が拡大したことにより、アメリカは徴兵制を導入し、市民を徴兵、訓練を実施し、戦地に赴いた。軍隊生活において兵士の士気と質の向上には、訓練に加えて娯楽が重要であるとアメリカ陸軍は考えており、娯楽の充実を図ろうとするが、乏しい予算では映画館や運動施設を作ることには限りがあり、また兵士たちはプライバシーのない軍隊生活では、ひとりで行う事をして余暇を過ごしたいを思っている者が多かった。ラジオを聞く、手紙を読む、そして雑誌や本を読むといったことである。
そのような状況の中、American Library Association(アメリカ図書館協会)が中心となり、兵士に送る書籍の寄付を募る ❝Victory Book Campaign(戦勝図書運動)❞ がスタートする。全米から書籍の寄付が各受付所などに集まり、それらは順次各基地へ送られた。しかし、戦地へ向かう兵士が増えるにつれ、より多くの軽い書籍が求められるようになる。そして戦勝図書運動から Council Books in Wartime(戦時図書審議会)へたすきが手渡され、兵士の軍服のポケットに収まる画期的なペーパーバックの書籍が刊行されることになった。
その ARMED SERVICES EDITION(兵隊文庫)は現代小説、歴史小説、ミステリー小説、ユーモア小説、ウエスタン小説、冒険小説、伝記、漫画、古典、時事問題本、ファンタジー小説、音楽、自然、詩、科学、海、軍隊に関する本、自己啓発本、旅行記など各出版社が過去に出版した作品の中から選定し、第1回目は1943年9月に30作品を各5万部刊行。終戦後の1947年5月までに1322作品、1億4千万部が刊行されている。
本書はその中の1冊、1945年5月に刊行された40作品の中のひとつ『ESQUIRE'S JAZZ BOOK 1944』である。アーネスト・ヘミングウェイの『To Have and Have Not(持つと持たぬと)』、エラリー・クイーンの『Calamity Town(災厄の町)』、イサク・ディネーセンの『Seven Gothic Tales(7つのゴシック物語)』など日本でもおなじみの作品と同時に刊行された文字通りエスクァイア誌によるジャズをテーマとした1冊。オリジナル版は写真図版が収録されているが、兵隊文庫版は部数を確保し、コストをできるだけ抑えるために体裁を統一し、テキストだけで構成されている。但し、カバーに表示してあるように図版を除けばオリジナルのダイジェスト版ではなく完全版として刊行されている。
1945年5月は沖縄戦の最中。太平洋の島々のアメリカの兵士にも兵隊文庫を行き渡らせるよう尽力した陸海軍と戦時図書審議会。戦時下に海を渡った戦地用ライブラリーの1冊である。
本の状態:ソフトカバー。カバーにシワ、キズ、破れあり。綴じのホッチキスに錆あり。内部ページの数か所に破れ。ページ欠けはない。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2016-08-31 12:00
| サーカス、音楽、舞台、映画

