2016年 03月 08日
BILL TRAYLOR 1854-1949 DEEP BLUES / Josef Helfenstein and Roman Kurzmeyer |
写真家ウォーカー・エヴァンスが1936年にアメリカ南部の州アラバマの州都モンゴメリーの街から西に140㎞ほど離れた街デモポリスで撮影した1枚の写真。
当時ウォーカー・エヴァンスは経済学者ロイ・E・ストライカー率いる RA (Resettlement Administration)、後のFSA (Farm Security Administration) のスタッフ写真家として南部の農業地帯の状況を撮影していた。写真には壁に貼られた白人と黒人の娯楽用ポスターが写されており、穿った見方をすると、白人のポスターの位置は黒人のそれよりも上のようだが、サイズは小さい。「ハングリー・アイ Hungry Eye」を持ったエヴァンスらしい1枚である。
1854年、Bill Traylor はアラバマ州ベントン近辺で中規模の綿花プランテーションを所有する George Hartwell Traylor の元で奴隷として生を受けた。1862年に「奴隷解放宣言」発布。ビル・トレイラーはその地にとどまり、ようやく1935年にモンゴメリーに移る。その時彼は82歳。そして写真家ウォーカー・エヴァンスが捉えた雰囲気が漂う南部の街で、ビル・トレイラーは初めて絵筆を握り、プランテーションでの記憶などを描き始める。
BILL TRAYLOR 1854-1949 DEEP BLUES / Josef Helfenstein and Roman Kurzmeyer
1999, New Haven, 192 pages, 218 x 272 x 20
82歳を過ぎてモンゴメリーの通りの片隅で絵を描いていたビル・トレイラーを発見したのは、モンゴメリー出身の画家 Charles Shannon 。シャノンはビル・トレイラーの経済的なサポートをし、作品も購入、そして1940年には街で展覧会も開催したビル・トレイラーの伝道師である。
本書は1998年から1999年までスイス・ベルン、ドイツ・ケルン、そしてアメリカ・バーリントンの美術館で開催された展覧会を機に刊行された1冊。
ビル・トレイラーの作品はもとより、シャノンが撮影したビル・トレイラーや街の写真、当時モンゴメリーを訪れていたスイス女性作家 Annemarie Schwarzenbach が撮影した黒人たちの様子を捉えた写真も収録し、アラバマの1930年代後半の様子を伝える構成にもなっている。
ビル・トレイラーのブルース音楽の波動を伝えるかのような作品群。アメリカン・フォーク・アートの歴史において彼が神話的存在のひとりとなったことを示している。
本の状態:経年変化程度で概ね良好。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2016-03-08 12:00
| アート