2015年 09月 06日
JULIA MARGARET CAMERON / Marta Weiss |
わずか十余年間の写真活動にもかかわらず、世界の写真史において上の写真のように写真史関連書に必ず取り上げられる女性肖像写真家ジュリア・マーガレット・キャメロン。1863年に娘夫婦から贈られたカメラと暗室道具。その時ジュリア・マーガレット・キャメロン48歳。カメラを手にした数か月後にはアニーという名の少女のポートレイト撮影に成功。そしてなんとその年に5点の写真をロンドン写真協会の年次展覧会へ出品し作風が話題となった。続いて1865年にはサウス・ケンジントン・ミュージアム(現在のヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム)のヘンリー・コールを介してまずは33点の写真を購入してもらい、展示がなされている。
今年2015年はジュリア・マーガレット・キャメロンの生誕200周年であり、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムが彼女の作品を収蔵・初の展覧会を開催してから150周年にあたる記念すべき年となる。
JULIA MARGARET CAMERON / Marta Weiss
2015, London, 187 pages, 220 x 260 x 17
今年8月13日から10月25日までシドニーのニュー・サウス・ウェールズ・アート・ギャラリー、続いて11月28日から来年2月21日までロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムにて開催されているジュリア・マーガレット・キャメロン展を機に刊行された図録。
博物学者チャールズ・ダーウィン、歴史学者トーマス・カーライル、画家ホルマン・ハント、詩人アルフレッド・ハーシェル、天文学者ジョン・ハーシェルなどキャメロンが居を構えた英仏海峡にあるワイト島のフレッシュウオーター湾で交流を持った名士たちをはじめ、周りの女性たちや子供にモデルを依頼して(屈服させ、おとなしく協力させて)撮影した写真界と美術界の両方で議論の的となった芸術性の高い絵画的写真の数々。「彼女の誤りが彼女の成功」とも評されるように現像の設備面、撮影技術、極端なクローズアップ、露光時間の長さなど、写真の真正面の文法から逸脱し、盲滅法に技術にぶつかっていったことによって生まれたぼんやりとした雰囲気に包まれながらも、その人物の偉大な性格を忠実に記録している精神性の高い写真の数々。本書にはクリーム色の紙に再現されたセピア調の代表作に加え、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムが購入・寄贈を受けたジュリア・マーガレット・キャメロンの収蔵作品のリスト、そしてキャメロンがサウス・ケンジントン・ミュージアム創立ディレクター、ヘンリー・コールに宛てた手紙などの資料を収録したアニヴァーサリーにふさわしい1冊である。
本の状態:フラップ付きソフトカバー。カバーには別刷り写真図版貼付け。ほぼ新品。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2015-09-06 12:00
| 写真集