2013年 09月 26日
ATELIER OF CEZANNE / Risaku Suzuki |

以前、ブログで取り上げたアレキサンダー・リーバーマンの著書 『THE ARTISTS IN HIS STUDIO』 に収録された1枚。エクス・アン・プロヴァンス郊外の画家セザンヌのアトリエを1949年に訪れた際にリバーマンが撮影したものである。同著には数枚のアトリエの写真とアレキサンダー・リバーマンのセザンヌのアトリエについての所見が綴られている。
セザンヌのアトリエは1902年頃、セザンヌ自らが建てた。画家の死から50年経過し、一時はプロヴァンスの詩人の所有になったセザンヌのアトリエ。その詩人は、一階部分を使用し、二階のアトリエはそのままの状態で手をつけずにいた。一階は2つの小さな部屋、暗いダイニングルームとベッドルーム、タイル貼りの床の小さな玄関ホール、辛うじて一人が動ける程度の暗いキッチンがある。メタルの手すりのついた非常に小さい階段が二階に通じている。それらの一階の生活空間とは対照的に、二階のアトリエは天井が高く、光に満ちた、多くの画家たちがそうであるように、明らかに主にとって主要な部屋であることが見て取れる。アトリエはきわめてきちんと几帳面にセザンヌの気を惹いたオブジェなどがキャビネットや長い棚に整えられていた。天井近くに掛けられた小さな十字架像によってこのアトリエの簡素な部屋の高さが引き立てられている。アトリエの隅のフックには、ケープ付きの黒色の薄いウールのコート、ベレー帽、もう1着のコートが掛けられており、側には折り畳みのイーゼル、白い傘、絵具で汚れたキャンバスのバッグが置かれ、それらは全てセザンヌと屋外とのつながりを示す生きた記憶の品である。アトリエの壁には、セザンヌが好んだ芸術家エル・グレコ、ティントレット、ティティアン、ドラクロワ、クールベの安っぽい粗悪な複製が掛けられている。アトリエの天井は白、ドアはペール・グレイ、壁はスレート・グレイ、床はニスの塗られていないナチュラルな木材であり、経年変化したグレイは、単色調の部屋に暖かな色合いを与えている。
ざっと抜き書きするとこのような描写である。アレキサンダー・リーバーマンがセザンヌのアトリエを訪れ、カメラを構えて目の前にある光景、つまり当たり前だが目に見えている光景を文章にしたものだ。












ATELIER OF CÉZANNE / Risaku Suzuki
2013, Portland, 28 plates, 288 x 364 x 8, 限定500部
写真家鈴木理策氏が画家ポール・セザンヌの晩年の視線を意識して撮影した作品集である。被写体はセザンヌが画材としたサント・ヴィクトワール山とひたすら絵と向かい合ったエクス・アン・プロヴァンス郊外にあるアトリエ。雑誌のインタビュー記事で、鈴木氏は19世紀のアカデミズム絵画の時代に、背景として描かれるにすぎなかった現実の山を描く革新性、対象そのものを捉えようとしたセザンヌの試みは、写真行為と本質的に似ていると感じ、それならばとセザンヌが見て描いたものを撮影することにしたと語っている。
刻々と変化する山、アトリエから山へ通じる道、そしてアトリエ。画家が世を去ってから100年を経過した今、見えているセザンヌの世界を動画の様に写真に定着させた1冊である。
本の状態:新品 (未開封)
価格:SOLD
by booksandthings
| 2013-09-26 12:00
| 写真

