2013年 01月 05日
MANHATTAN MAGIC / Mario Bucovich |
「ニューヨークへ着いた。ぼくらは空間を旅してきたのだが、摩天楼を見ると、まるで時間を旅してきたような強烈な印象を受けた。」
- Vladimir Nabokov, 『Nabokov's Dozen』, 1958
ロシア生まれの小説家ウラジーミル・ナボコフの短編小説『ナボコフの1ダース』の一節。
ナボコフは1940年にヨーロッパから初めて渡米し、1945年に帰化している。
1937年に刊行されたMario Bucovich によるマンハッタンの写真集に収録された街の姿は、おそらくナボコフが初めて目にした光景に近いものだったろう。
MANHATTAN MAGIC / Mario Bucovich
1937, NY, 93 pages, 235 x 304 x 8
パリやベルリン、ワシントンなど都市の写真で知られるドイツ人写真家 Marius von Bucovich によって撮影されたマンハッタン。
刊行年1937年は、1929年にこのマンハッタンから端を発した世界恐慌に対する経済政策ニューディールの効果もあり、GDPが右肩上がり、失業率も低下の傾向にあった頃だろう、と同時に写真集ではマガーレット・バーク=ホワイトの『You Have Seen Their Faces (1937)』、FSAプロジェクトによるドロシア・ラングの『An American Exdous (1939)』、ウォーカー・エヴァンスの『Let Us Now Praise Famous Men (1941)』などアメリカ南部の農村の惨状を記録した刊行物が出版された時期でもある。
壮観な高層ビル、歴史的建築物、街を貫く大通り、広大な公園、光を発する幾千もの窓の明かり、南部の人間やヨーロッパ人にとっても信じられないパノラマをマンハッタンは呈していただろう。
1936年に就航しサウサンプトンからシェルブールを経由し、ニューヨークまでの定期航路客船 “Queen Mary” の船上で、Mario Bucovich は本書のためのマンハッタン讃歌といえる序文を書いている。
本の状態:ソフトカバー、スパイラル綴じ。スパイラル綴じの下部2穴が破損。カバーに擦れ、折れあり。見返しに小さなシール剥がし跡あり。その他は経年変化程度。
価格:¥18,700
by booksandthings
| 2013-01-05 12:00
| 写真集