2017年 05月 10日
JOHN DEAKIN PHOTOGRAPHS / Robin Muir |
場所はロンドンのクラブ『コロニー・ルーム(通称ミュリエルズ)』だろうか。“ロンドン派”とレッテルを貼られた画家5人が談笑しながら食事をとっている。
向って左からティム・ベーレンズ、ルシアン・フロイド、フランシス・ベーコン、フランク・アウアーバック、マイケル・アンドルーズ 。コロニー・ルームのオーナー、ミュリエル・ベルチャーは、まだそれほど名が売れていなかったフランシス・ベーコンに週当たり10ポンド、そして店ではロハで飲み放題にしてこの未来の大芸術家に客引きをさせた。客引きと言うよりもフランシス・ベーコンの好きな仲間を連れて来いということだったようだ。フランシス・ベーコンが店の資産になると見抜いた女傑であり、フランシス・ベーコンはいくつかの彼女の肖像画を描いている。
写真の撮影者はジョン・ディーキン。「私にとって彼の肖像写真は、ナダールやジュリア・マーガレット・キャメロン以来最良のものである。」とフランシス・ベーコンは語った。
JOHN DEAKIN PHOTOGRAPHS / Robin Muir
1996, Munchen, 141 pages, 249 x 318 x 19
フランシス・ベーコンにとってジョン・ディーキンが撮影したポートレイトはいくつかの作品制作の契機となっている。頼めばアトリエに来てポーズをとってくれる友人の場合でも、肖像画用の写真を撮って、その写真を見ながら自由に描くほうが、目の前にモデルが座っているよりものびのびできると言っていたその写真の数枚がジョン・ディーキンによるものである。
1940年代後半から1950年代前半に British Vogue 誌の写真家として仕事をし、素行の悪さ(?)ゆえに、2度ほど解雇されたジョン・ディーキンが撮影するポートレイトは囚人の人相写真のように顔の前面や横顔を捉えた情け容赦のないまるだしの衝撃的なものだ。
ジョン・ディーキンの死後、忘れ去られ、散在していた写真を集めて編集されたものが本書である。もちろんそれらの中には、フランシス・ベーコンのアトリエの床に散在していた皺だらけの写真も含まれている。
本の状態:経年変化程度。
価格:SOLD
(訂正)上の写真の撮影場所は『コロニー・ルーム』ではなく、Old Compton Street にあったオイスター料理の店『Wheelers』だった。
by booksandthings
| 2017-05-10 12:00
| 写真集