2012年 06月 30日
TRACES OF THE BRUSH: STUDIES IN CHINESE CALLIGRAPHY / Shen C.Y.FU |
ソール・スタインバーグの作品の中に、カリグラフィーを多用した作品が見られる。判読不可能な小さな文字を書き連ね、全体的に見ると非常にグラフィカルなまとまりを感じさせる作品なのである。15世紀あたりの羊皮紙に書かれたディプロマや契約書のようなものをも思わせるこれらの作品は、ユーモラスなイラストレーションと双璧を成すものだろう。
カリグラフィーといえば東洋、特に中国なしでは語れない。「書は姓名を記すに足る」という項羽の言葉があるが、このような暴言があるくらい、書は奥深い芸術である。
TRACES OF THE BRUSH: STUDIES IN CHINESE CALLIGRAPHY / Shen C.Y.FU
1977, New Haven, 314 pages, 220 x 291 x 26
1977年にアメリカのイェール大学、バークレイ大学で開催された中国のカリグラフィー展の際に刊行された図録である。
中国の書といえばまず王羲之。その複製図版から始まり、篆書・隷書、草書、行書・楷書、法書の秀作が順に収録されている。順番と言えば、若き北大路魯山人(当時、福田房次郎)が京都から東京へ出、当時二大書家として名を馳せていた日下部鳴鶴と巌谷一六の憧れの門を叩き、自身の隷書の作品を書いて持って行ったところ、「(隷書は最後にやるものだ)まず楷書からやれ」と言われ憤慨し、その場を去ったというエピソードが思い浮かぶ。魯山人は、その後日本美術協会展覧会で新たに開設された書の部門で一等賞を受賞している。出品作は「隷書千字文」。審査員には、「隷書は最後にやるもの」との考えを持っていた日下部鳴鶴と巌谷一六も含まれていたというから面白い。
本の状態:ソフトカバー。経年変化程度。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2012-06-30 12:00
| その他