2012年 03月 07日
BEATON IN VOGUE / Cecil Beaton |
ヘンリー8世の治世に建てられた古い邸宅の庭で鶏に餌を与えるマドンナ。子供たちと一緒にとてもユニークな新聞柄の枕や掛け布団のベッドでカメラ目線のマドンナたち。着ているパジャマもとてもイギリス的である。この邸宅はかつて写真家セシル・ビートンが15年もの間借りていたアシュコウムの別荘。ここはビートンにとって夢の城、遊び場、社交の場であり、仕事場でもあったところだ。ビートンはここでハウス・パーティやピクニックに友人たちを招き、そこで撮った写真を“VOGUE” 誌にも発表した。
マドンナはビートンのバイオグラフィー作家 Hugo Vickers と親しい関係にあり、ビートンの愛したこの別荘が売りに出ていると聞き購入したそうである。鶏に餌を与えたり、新聞紙のベッドによる撮影の演出は、すべてかつてのビートンがこの別荘で過ごした時の写真を元に再現したオマージュだろう。
BEATON IN VOGUE / Cecil Beaton
1986, NY, 240 pages, 250 x 292 x 33
セシル・ビートンは、まだケンブリッジの大学生だった頃に“ヴォーグ”誌に2枚のスナップ写真でデビューした。創造力に溢れ、多才なビートンは1920年代、30年代を“ヴォーグ” と独占契約し数多くの仕事と報酬を手にしていた。写真だけでなく、気のきいたスケッチを描き、文章もこなし、その活動範囲はコラムニスト、従軍記者、ファッション・イラストレーター、旅行作家、舞台装置家と多岐にわたり、「ビートン一人でも“ヴォーグ”をやってゆけただろう」と言われるほどだった。
そのビートンの“ヴォーグ”時代をまとめた作品集が本書。先にあげたビートンの“ヴォーグ”での仕事が集約されている。ビートンの1958年に書かれたコメントが序文として掲載されている。それには興味深い一節がある。ビートンが本格的に“ヴォーグ”との仕事を始めるとき、オーナーのコンデ・ナストから現在使っているコダック(ブローニー)のカメラを本格的なカメラ(8X10)に切り替えるように迫られた。どこでも軽々と持ち歩き、簡単にシャッターを押すことが出来るコダックのカメラを手放すのに抵抗のあるビートンにコンデ・ナストは「うちが欲しいのは色なんだ。光のコントラストが色を作る。スタイケンの作品を見るがいい。君の普通のカメラでは色が出せない。専門家らしいカメラを買ってきたまえ。」と言われたそうだ。その忠告に従い本格的なカメラに切り替え、最初は悪戦苦闘していたが、後になってビートンは、ナストの忠告が正しかったと言っている。
本の状態:概ね良好。
価格: SOLD
フランス語版。
50 ANS DE COLLABORATION AVEC VOGUE / Cecil Beaton
1986, Paris, 240 pages, 250 x 292 x 33
本の状態: ジャケットの縁部分にほんの少しキズあり。その他は経年変化程度で概ね良好。
価格: SOLD
by booksandthings
| 2012-03-07 12:00
| 写真集