2012年 02月 21日
NOW BECOMING THEN / Duane Michals |
壜や水差しなどの静物画を描き続けたイタリアの画家ジョルジョ・モランディ (Giorgio Morandi) のアトリエを撮影した写真では同じイタリアの写真家ルイジギッリ (Luigi Ghirri) の作品がよく知られており、写真集としても刊行されている。撮影された時期は1989年から1990年にかけて。ルイジ・ギッリ独特の色調でアトリエに残された様々なものや、その空気感、差し込む光を捉えている。
その4年前の1985年にモランディのアトリエをアメリカ人写真家ドゥエイン・マイケルズ (Duane Michals) も撮影し、作品集に6枚だけ収録している。精神分析学やシュールレアリスムに影響を受け、連続写真、反射、多重露光、写真に添えられる自筆のテキストなどの作風で知られる写真家である。ドゥェイン・マイケルズはチェコからの移民であり、ユージン・スミスのドキュメンタリー写真で知られるアメリカの鉄鋼業の町ピッツバーグで幼少過ごす。嘗てアメリカで公害訴訟が問題となった町だ。父親は当然のごとく鉄鋼会社で働き、母親は家政婦をしながら家計を支えていたそうである。“ORANGE” と名付けられた車窓から写されたであろう鉄橋の架かった川の写真に手書きで添えられたテキストには「幼かった頃、すべての川は黄色で、空は毎夜オレンジ色だと思っていた。」とある。ドゥェインという名は母親が家政婦をしていた裕福な家庭の子どもの名を真似たそうである。そのオリジナルのドゥェインは高校時代に自殺未遂。この事件はドゥェイン・マイケルズの作風に影響を及ぼしただろうか。
NOW BECOMING THEN / Duane Michales
1990, Altadena, 238 x 310 x 25
生と死、セクシャリティ、若さと老い、夢などをテーマとした物語風のシークエンス、多重露光、鏡などを使用した代表作品と著名人のポートレイトなどをまとめた良書。
良く知られた「堕天使」の連続写真は、部屋のベッドで女が寝ている写真ではじまる。そこに天使の羽根をつけた男が現れ、男は女に跪き、キスし、重なる。ことを終えた男の背にはもはや羽根はなく、苦悩し、そして服を身につけた人間の姿で立ち去る場面の写真で構成されている。物語としてはシンプルだが、そこにはドゥェン・マイケルズの哲学が表されているようだ。
ユーモアを含んだこれらの写真をテキストを読みながら眺めるのはなんとも楽しい。
本の状態:ジャケットに擦れあり。帯の背部分に折れ目あり。その他は経年変化程度。
価格:SOLD
100部限定外箱付サイン入り本。Signed Limited Edition.
本の状態:
価格:SOLD
by booksandthings
| 2012-02-21 12:00
| 写真