2011年 12月 28日
THE WONDER CLOTH / The Museum of Korean Embroidery |
パウル・クレーやピエト・モンドリアンの抽象絵画の構成に例えられる韓国のチョガッポやポジャギ。この芋麻のチョガッポは夏用で、麻の衣類を包むために使用されたものである。包まれる衣類を傷めないようにとの配慮から、麻の衣類は麻のチョガッポに、絹の衣類は絹のチョガッポにというように、包むものと包まれるものの素材を必ず一致させたという。麻素材の色調は淡いモノトーンの中間色でまとめられいるものが多く、反対に絹のものは強いコントラストのものが多い。
ビニールバッグやダンボール箱などの普及により日常生活では消えてしまった布の芸術品である。
女性たちが余り布を縫い合わせて製作した布と糸と針の造形の伝統を様々な制約下にあった女性たちの恨み悲しむ気持ちの産物として感傷的にとらえられる面があるそうだが、みしろ希望と喜びをこれらの作品のなかに見ることができる。女性たちの描き出そうとしているものは、楽園の世界や想像の世界、時にはユーモラスであったりして見ているものに喜びと感動を与えるにちがいない。
未だにチョガッポを縫っている初老の女性に作っているときにどのようなことを考えているのかと聞いたところ、「これを見て、私の村の地図のようだと思わんかね?」という答えが返ってきたと何かで読んだことがある。なるほどその婆さんにとっての小宇宙だったにちがいない。
THE WONDER CLOTH / The Museum of Korean Embroidery
1988, Seoul, 283 pages, 265 x 358 x 33, Text in Korean and English language
韓国刺繍博物館の収蔵品の中からポジャギ、チョガッポを収録した1冊。この博物館は公的な施設でなく、或る1人の男性のコレクションを収蔵しているプライベート博物館というから驚く。当初は奥さんが経営する歯科医院の2階部分が展示スペースだったそうである。ソウルを訪れた際は是非足を運びたい。
本の状態:経年変化程度で概ね良好。
価格:SOLD
by booksandthings
| 2011-12-28 12:00
| 陶芸・テキスタイル