2011年 12月 13日
LE PETIT MONDE DE PABLO PICASSO / David Douglas Duncan |
ピカソの晩年の生活は外から見てとても幸福そうだ。生前から作品が高額で売れ、だれに指図されるわけではなく、自分が思う通りのペースで思う通りの仕事ができる。数多く出ているピカソを被写体とした写真集を眺めていてますますそのように思う。
戦争写真家として第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争などで活躍したアメリカ人の写真家 David Douglas Duncan は戦争写真以外にピカソの写真集を数多く手掛けている。その中でもピカソとの初めての出会いから後に彼の住まいであるカンヌのラ・カリフォルニー荘で数ヶ月生活を共にし撮影した1万枚もの写真の中から選び、デヴィッド・ダグラス・ダンカンの「これはおそらく、この世で最も幸福な家だ」で始まる文章で綴られたこの写真集は格別である。
ふたりの出会いのきっかけはこうだ。
ダンカンが仕事で西アフガニスタンの城砦都市の撮影していると、友人のひとりがダンカンがつけていた4世紀のギリシャの貨幣で作られた時計のベルトに目を留め、付近の廃墟で同じようなものを見つけたと譲ってくれたものの中に雄鶏を刻んだものがあった。ダンカンはそれを見てその素朴な姿はピカソが描いた鳥を思い出す。その時ダンカンはピカソと面識はなかったが、これをみたらきっと喜ぶだろうという気がしたそうである。そしてそれをポケットにしまい、一旦ローマの自宅へ戻る。
その後、仕事でモロッコへ行く機会があった時にカンヌに立ち寄り、ピカソの家をつきとめ、訪問の理由を告げ面会が許される。そしてこの出会いが写真集の出版につながったというわけである。
LE PETIT MONDE DE PABLO PICASSO / David Douglas Duncan
1959, Paris, 176 pages, 220 x 285 x 15
ピカソは非常にプライバシー大事にしている傍ら友人たちに対しては開放的なようだ。ダンカンが生活を共にしている時にも数々の訪問客がいたようである。
ジャン・コクトーの突然の訪問の際には、イタリアの道化のマスクを着けて登場。スタジオの隅にあったマリンバを2人で奏でる。ピカソは音楽家でもあるコクトーに「は、は、思ったとおりだ。君にはまったく音楽のセンスがないな」とからかう。
フランス人俳優イヴ・モンタンとその妻シモーヌ・シニョレの時は政治談議に話が及び白熱する論議にピカソは静観。
ゲーリー・クーパーは映画「サラトガ・トランク」でかぶっていた大きなステットソン帽と拳銃コルト45を手土産にやってきた。一握りの薬莢も一緒に。早速ピカソは絵具の空缶をもって庭へ出て、「警察署長は友達だから大丈夫だ、心配するな」と言って空缶めがけて拳銃を撃ち始める。周りの皆は塹壕を探して逃げ回り、バルコニーで居眠りしていた鳩は驚いて飛び立ち、砂や周りの木の皮は弾に当りところ嫌わず舞い上がるといったドタバタ状態。
パロマ・ピカソなど前妻の子どもたちが訪ねてきたときはすっかり親ばか。子どもと一緒にはしゃぎまわる。
内部ページはモノクロ写真、そしてテキスト部分はブルーの紙に印字されており、背表紙の色と上手くバランスがとれたデザインとなっている。
本の状態:ジャケットに破れ、キズ、シワあり。本体は経年変化程度で概ね良好。
価格: SOLD
by booksandthings
| 2011-12-13 12:00
| 写真集