2020年 05月 04日
TO A CABIN / Dorothea Lang and Margaretta K. Mitchell |
おそらく20世紀のポートレイト写真の中でも非常によく知られた写真の中の1枚であろう。撮影者はドロシア・ラング (Dorothea Lang)。被写体の女性の名はフローレンス・トンプソン (Florence Thompson)、当時32歳。1936年に仕事を探すためにハイウェイ101をワトソンヴィルへ向けて移動中、車の故障により路肩に簡易テントを設営し、車の修理に出かけた夫と数人の息子たちを待っている際にドロシア・ラングに撮影された有名なショットである。世界大恐慌時代の影響を色濃く残す過酷な時期において、母のイメージを印象付けるに充分な1枚。
ドロシア・ラングは、恐慌下、自然災害なども重なり土地を失っていた農業者の移住計画を進めていた農業安定局(FSA)の写真プロジェクトに参加し、その過酷な状況を数多くの写真に残している。
その彼女が晩年に自身の子供や孫たちのために “a little book” と呼んでいた写真集作りを計画する。内容は、カリフォルニアの太平洋に面した立地に所有する小屋に子供や孫たちが集まって生活する様子をまとめるというもの。しかしドロシア・ラングは、志半ばにこの世を去ってしまう。空と海と大地。孫たちがスケジュールに縛られずに自由にシンプルに過ごす。そんな姿をドロシアは残したかったのだろう。
1973, NY, 127 pages, 264 x 235 x 15
ドロシア・ラング亡き後に仕事仲間であり友人でもある Margarette K. Mitchell が彼女の遺志を継ぎ、引き続いてビーチで撮影を続けた。そしてその二人の共著がついに『TO A CABIN』と題して形となった。
本の状態: ジャケットに擦れ、シワ、キズ、破れあり。本体は経年変化程度で概ね良好。
価格:SOLD
「移住労働者の母子」と名づけられた被写体の女性フローレンス・トンプソンは1983年にその生涯を終え、夫の横に埋葬された。
墓碑には “FLORENCE LEONA THOMPSON Migrant Mother – A Legend of the Strength of American Motherhood” と刻まれているそうである。
付記
Photoshop を駆使し嘗て撮影されたモノクロ画像がカラー画像に加工できるようになり、それらの写真作品をまとめた書籍も数タイトル刊行されている。その中の1冊から。
FLORENCE THOMPSON WITH ONE OF HER CHILDREN AS A PART OF DOROTHEA LONGE'S "MIGRANT MOTHER" SERIES, 1936
- 『THE PAPER TIME MACHINE by Wolfgang Wild & Jordan J. Lloyd』2017
by booksandthings
| 2020-05-04 12:00
| 写真集